SPring8 実習報告
異なる学部同士で話が出来たのも面白かった
物質生命工学専攻 学籍番号43419472 氏名 古谷充章
今回この先端放射光実習に参加して、放射光を用いた実験がどういったものであり、どのようなことが出来るのかといったことが勉強になったと思います。様々な装置や実験を行ったわけではなく、1つの実験だけをしたわけですがビームラインの担当者の方や引率の先生、今回の実習に協力していただいた企業の方にいたるまで熱心にご指導していただけたことで様々な見識を得ることが出来ました。私自身は工学部に所属していることもあり、これからの研究の参考になりそうなことも色々と教えていただけたことも大きかったと思います。今まで身近に感じることがなかった放射光について、それを用いた実験を行うことでどういったものかを理解することが出来ました。この実習で学んだことを今後の研究生活にも生かせていければと思います。
今回具体的にはXAFSの実験を行いました。Sampleに放射光のエネルギーを変えながら照射していき、照射する放射光の強度と透過してくる放射光の強度を測定することによりその物質の化学状態や配位する原子の数、結合距離などの情報が得られる測定です。得られるXAFSのスペクトルは2つに分けられ、1つはXANESと呼ばれる吸収端近傍の部分と、もう一方はXANESより高エネルギー側に現れるEXAFS振動と呼ばれるものです。前者の方からその元素の化学状態(価数など)、後者からは配位数や動径分布がわかります。このような測定は構造解析や結晶構造の決定などに使えるということがわかり大変興味深いものでした。また透過法での測定や蛍光法での測定など、試料の状態などによって同じ実験でも最適な検出方法が異なるということにも驚きました。今回の実習ではペレットの試料調整からXAFSの測定、さらに得られたXAFSのスペクトルからEXAFS振動の方の解析を行いました。試料調整のペレット作り等はいつもの研究室実験で慣れていたので特に苦労もなく作製することが出来ました。またいつもの実験のようであまり新鮮味はありませんでした。測定は実験ハッチの中で行うのですが、その実験ハッチが物々しく遮蔽されている姿は圧巻でした。XAFSスペクトルの解析ではXANESの方はほとんど変化がないということだったので、試しに見てみると確かに変化はあまりありませんでした。EXAFS振動の解析は、振動抽出に始まり抽出した振動をフーリエ変換し、さらにそのデータを逆フーリエ変換することにより様々な情報を得ることが出来ます。丁寧に説明してくださったので少しずつ上達していったのですが、解析がかなり難しかったことと、組成は企業秘密ということで伏せられていたので完全に解析は出来なかったのが心残りでした。また人によってはうまく測定できない試料が含まれており、苦労している姿が見受けられました。運がなかったといえばそれまでなのですが、全てのsampleがダメな人もいたのでそれは少しかわいそうでした。出来れば全員に均等にそのような試料が含まれるようにするなどといった工夫をすれば、もっといい実習になったのではないかと思います。また実習の段取りもその場で決められていたので、もう少し事前に打ち合わせ等していただければ、と思います。そうすることで学生の方も、もっといい勉強になると思います。幸い私のsampleは全て順調に測定が終わったため、時間が空いたのでSpring-8の中を探索していました。国の施設ということもあり蓄積リングはかなり大きく自転車でもかなり時間がかかったのが印象的でした。途中で電気代や維持費などの金額を見つけたとき、その金額の莫大な額に唖然としました。また同時に国のお金の使い方の一端が見えたような気がして、少し社会的なものも見えたのが面白かったです。
今回の実習では工学部と理学部の学生が合同で参加していたので、異なる学部同士で話が出来たのも面白かったと思います。いつもは接点があまりないため話すことがない相手と話せる機会が出来るといった意味でも、この実習は大きな意味があったのではないかと考えています。まだまだ改善するところも多い実習ではあると思いますが、様々な体験が出来るのでいい機会ではないかと思います。これから改善されていきより良い環境を学生に提供でき、学生の興味や好奇心を引き出せるような実習になるのではないかと思いました。
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