SPring8 実習報告
実際やってみないと絶対にわからない例を体験
物質生命工学専攻 学籍番号43419468 氏名 原田侑奈
私はSpring-8における先端放射光科学実習に参加して、まずその大きさに驚いた。
前々から話は聞いていたが、実際に見るとやはり迫力があり、圧倒された。
このような巨大な施設で、多数の研究者が世界最先端の研究を行っているということに感嘆し、
また、彼らといろいろ話をする機会もあり、非常に刺激を受けた。
今回の実習で、放射光が材料測定において重要な役割を果たしていることを知った。
透明電極に用いられる材料中の亜鉛の結合状態を知るために、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)
という方法で構造解析を行った。XAFSでは、着目原子の周辺原子数、種類および原子間距離等の情報が得られる。
Spring-8に行く前に、XAFSとはどんな手法か? ということをきちんと理解してから実習にのぞむべきであった。
しかし、普段使用したことのない測定方法であり、あまりなじみのないものであったので、
事前に配布された資料に目を通しても、今ひとつ理解しがたかった。
宿題として測定する試料の調製のための計算が出されたのだが、ある程度XAFSのことを知っていないと難しいため、
だいぶ苦労した。実習では、パラメータ一つ一つが何を表しているのか、ということを教えてもらい、その意味を理解できた。
講義を聴いたり本を読んだりして頭の中だけで考えるよりも、実際に装置を見て、測定をしてみて初めてわかることが多い。
こういった実習はそういう点において優れていると思う。今回の測定では、試料を調整し、測定を行ったものの、
吸収がうまく測定できないという試料がいくつかあった。その場合、できなかったから、といって測定をあきらめるのではなく、
試料を調整しなおして再度測定を行った。強度が足りない、ということで測定する試料の量を多くし、
測定時間も増やして測定すると、なんとか解析できるデータが取れた。試料の作り直しという手間はかかったのもの、
測定中にどのような問題が起こることがあるか、そしてそれにどうやって対応すればよいか、
実際やってみないと絶対にわからない例を体験できてよかったと思う。
実習ではXAFSのための試料調製から測定、解析までを行った。
このうち、解析についてはフィッティングを行う際には経験が必要らしく、どのようにすればうまくいくのかつかみづらかった。
さらにある程度構造の予測ができていないと解析は難しい。何回も解析をして作業に慣れなければならないのだが、
今回は自分が測定、解析したサンプルは3つだけだったので、その感覚をつかむまでにはいたらなかった。
また、解析についてはパソコンに頼る部分が多く、計算過程、理論をあまり理解しないままにしてしまった。
実習を終えてみて、まだまだ勉強しなければいけないと思うことが多くある。むしろ実習前よりもその必要性を強く感じる。
今回は世界有数の放射光施設で実習ができて、よい経験になったと思う。これからもXAFSだけでなく、
様々な測定を行わなければならないことがあるかもしれない。今回の実習の経験を生かし、今後の研究の励みにしていきたい。
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