岡山大学大学院自然科学研究科 先端基礎科学専攻(物理学・数学・地球科学)  
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 1.[Spring8 実習の感想]

SPring8 実習報告

様々な実験で用いられるノウハウを知ることができる


数理物理科学専攻            氏名 柿沼 光之

 1月31日から2月4日にかけてSPring8でθ-(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4 (RbZn塩) を測定した。類似の「有機サイリスタ」θ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4では、低温において電荷秩序による絶縁性を表すが、電流を流すことによって非線形抵抗を示す。その現象の起源は電流が電荷秩序を融解することによるものと考えられているが、まだ確かなことは分かっていない。その起源がどこにあるのかを突き詰めるため、似た性質を持つRbZn塩を用いて実験を行うこととなった。  本実験試料であるRbZn塩は冷却をすることにより、200K 付近において絶縁相を示す電荷秩序が成長しはじめるが、その変化よりも早い急冷を行った場合に、低温において非線形抵抗を表す相へと変わる。この状態で、ある温度以上で時間を置くと、通常の絶縁相が成長し始め、徐々に非線形抵抗の相も消えていく。今回の実験は、この変化の電流電圧及び、X線回折像を定期的に取得して、非線形抵抗の相の変化が構造とどのような関係を持つのか調べた。
 今回この実験で自分が主にかかわったことは、試料を実験装置に設置するためにサンプルホルダーに試料をつける作業である。実験はHeガス吹き付け冷却装置による低温電流電圧下でのX線解析が目的なので、 1)Heガスにより動かない程度にサンプルホルダーに接着し、2)電流圧測定のために接触抵抗が低くなるように試料両端へ金線をつなぐ3)入射X線及び必要な回折X線を金線で切らないように試料を取り付け、4)金線の間にX線があたる試料部分を出来るだけ大きく取る、の四つを注意することになった。1)、3)については予備実験などで慣れていたためさほど問題にはならなかったが、2)については困難だった。金線の接着にはカーボンペーストとその溶媒として琥珀酸ジエチルを用いたが、この溶媒の蒸発速度が極端に遅いのか、または溶媒としてうまく作用していないのか、導体としての接着がなされず、試料の抵抗が満足に測れなかった。そこで他大学の方々のアドバイスをもらい、金線と試料を可能な限り接触させた状態で、新しいカーボンペーストを用いることにより問題を解決できた。4)については、試料の長軸が大きくても1.5〜2.0mmのものが大半であるので、金線をできるだけ端へつけるのだが、確保できる金線間隔はたいてい0.5〜1.0mm前後となる。通常のX線装置の場合、あまり間隔が小さくてX線を絞ることになると、十分な回折強度を得ることが出来なくなる。本実験試料RbZn塩では回折像の微小な変化を見たいため、強度が得られないのは問題となる。だが、SPring8は高輝度といわれるだけあり、X線の直径を絞っても強い強度を得ることが出来るため、今の自分の未熟な技術は大いに助けられることとなった。
 今回のSPring8実験では、様々な実験で用いられるノウハウを知ることができ、新しい刺激を受けることとなった。

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