SPring8 実習報告
測定の操作も行うことが出来ました
物質生命工学専攻 学籍番号 43419457 團野瑛章
この度、SPring-8の実習に参加させて頂き、とてもよい経験をつめたと思います。今回実習で行った実験は、透過型XAFSで、透明電極に使用されている物質の測定を行いました。私は以前にも、研究室の先輩の実験の手伝いでSpring-8に行く機会があり、その時に行った実験もXAFSだったのですが、その時は、XAFSという実験でどのようなことがわかるのかはほとんど知らず、ほとんど作業のみの手伝いでした。ですので、XAFSの実験の手順などは知っていたのですが、XAFSの理論やその解析の方法についてはほとんど知りませんでした。今回の実習ではXAFSの理論と、実際にどの様な試料に適用出来るか、また、どのような時に測定が有効であるか等を学ぶことが出来ました。
今回の実習は2泊3日で、実習自体は二日間で終わり、一日目は理論の学習と測定する試料の作製を行い、二日目は実際の測定と測定データの解析を行いました。以下にその詳細を書きます。
まず一日目ですが、最初に行ったことは放射光のエネルギー調整の見学でした。蓄積リングからビームラインの実験装置へと放射光が至るまでにどのようにエネルギーが調整されていくかを見せてもらえました。具体的には、偏向磁石を用いて放射光を発生させ、発生した放射光を、モノクロメーターを用いて単色化,すなわちエネルギーを揃え、揃った光を試料に当てるといった感じでした。以前にもSPring-8に来たことはあったのですが、実際にモノクロメーターを見たのや、モノクロメーターが置いてある部屋の中を見たのは初めてでした。XAFSに使用するX線は硬X線なので、大気中でもあまり減衰しないそうなのですが、それでも試料に到達するまでに多少の減衰があるらしく、それを防ぐために、試料台以外のX線が通過する場所は全て真空に引き、減衰を抑えていました。次に行ったのは、XAFSの理論と、今回測定する試料がどのようなものであるかと、今回行った透過型XAFSの調整の仕方を教えてもらいました。
XAFSの基本的な理論は、X線を試料に照射し、透過前後のX線のエネルギーを測定することで試料中の特定の元素の状態がどのようになっているかがわかるというもので、主に元素の価数や、配位子とどのように結合しているかの測定に用いられており、試料の状態によって透過型、蛍光法など様々な方法が用いられているそうです。XAFSにおいて重要なのは試料の調整であることと、その調整法についてや、透明電極がなぜ透明なのに電気を通すのかと、今回の実験のねらいについても教えてもらいました。特に、今までXAFSの試料の量は、計算ソフトを使って出していたため、今回どのようにその量が決まっているのかがわかり、大変勉強になりました。一日目の最後に行ったことは、実際に測定する試料の作製でした。試料の準備は、バインダーと呼ばれる、X線吸収の小さい窒化硼素と渡されたサンプルを混合し、プレス機を用いてペレット状に成型を行い、出来たペレットをビニールの袋に入れて完成としました。
二日目は、一日中前日に作った試料の測定を行いました。以前XAFSの測定に来た時には試料を試料台にセットするぐらいしかしなかったのですが、今回はパソコン上で測定の操作も行うことが出来ました。今回測定した試料は、透過型XAFSで測定出来るぎりぎりの濃度のものが多かったらしく、試料の作り直しや、測定データが解析出来ないといったことがありましたが、実際にデータを解析することができ、解析が難しいことと、かなり任意性があることがわかりました。
今回この実習に参加することで、XAFSの原理以外にも様々なことを学ぶことが出来ました。また、企業の人や職員の人から為になる話や面白い話を聞けたり、普段交流のない理学部の学生と話せたことは非常に良い経験になりました。今後、放射光への知識を深めるとともに、今回の実習で学んだことを自分の実験に活かしていきたいと思います。
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