SPring8 実習報告
自分が行っていることと重ねることができた
数理物理学専攻 学籍番号41419116 氏名 佐伯 邦成
今回の放射光実習では旭化成の名雪さんやSpring-8の広澤さんなど現場の技術者の方たちに色々と指導を受けながら実験を行いました。普段、一般の企業がどんな実験装置を使い、どのように実験を行っているのか、また、どのように解析を行っているのか、そして何よりその結果をどのように生かし社会に役立てているのか、など多くのことを学ぶことができ、非常に有意義な実習であったと思います。特に今回は、歪がかかった薄膜の評価、解析という実習などを行い、今、自分が行っている実験とよく似ていたのと、名雪さんや広澤さんは非常に丁寧に教えていただいたこともあり、とてもわかりやすく意味のある楽しい実習を行うことができました。本当に多くのことが得られたと思います。僕の得たもの中で今回最も大きかったものは、企業で行われている実験、解析などの一部に直接触れることができ、それを現在自分が行っていることと重ねることができたことだと思います。今、自分が行っている実験は結局学生という限られた立場、社会人のように利害の生じる立場とは明らかに異なった立場なので、将来自分が研究者となった時にどのように役に立つのかよくわかっていませんでした。正直なところ、今やっている実験や解析や発表などは、企業に入ってするそれとは全く違うだろうと考えていました。しかし、何のために実験をするのか、得られた結果が何を意味するのか、この結果を踏まえこれからどうするのかといった流れ、考え方の中で必ずどこかに、今自分のやっていることと同じようなことが含まれていることを感じました。将来企業に入ることがあるとするならば、そのもの造りの過程の中で今自分が行っている研究は必ず役に立つことがあるということを実感しました。また少ない時間でありましたが、多くの貴重なお話も聞けることができました。技術者として何が最も大切かといった話や、企業では大学とここがこう違うといった話など多くの話から企業の厳しさ、面白さを伺うことができました。そういった話の節々や実験に対する姿勢などから、これから社会に出て行く技術者として必要なことは何なのかということを教えてもらったと思います。特に今回は実習も時間を大幅に超えて行われましたが、予定の時間をオーバーしても途中やめにすることなく、逆にますます実験にのめりこみ力の入っていくその姿から技術者として最も必要なことはたとえどんな結果でも、どんなトラブルが起こってもいつまでたっても実験そのものを楽しいと感じることができることだと教えてもらったような気がします。実験についてはSPring-8の放射光を利用して反射率測定やX線回折測定を行ったのですが、SPring-8は光の強度も強く、装置も整備されているので高精度の結果が得られ、その実験や解析はとても簡単に早くよい結果がでるものだと思っていました。しかし、そういうわけではなく、高精度だからこそ実験は非常に難しくデリケートで結果もなかなか思うようにはいかない、いつも以上に測定に気を使わなければならない、特にSPring-8では時間が限られているので思うような結果が出ないときには様々な原因を素早く考えなければならないのだということ、高性能なら高性能に見合った考え方をしなければならないということを強く感じました。同時に、ここで感じ、学んだことは今後に生かせる、こういったキャリアを積んでいくことにより、一歩一歩成長していくのだなとも思いました。
今回の実習は幸運にも自分がこれまでにやってきたことと関係の深い内容の実習でした。そのためかなり理解できましたし、その分とても楽しい実験になりました。名雪さん始め企業の方やSPring-8の方も熱く、楽しく話してくれて、今後の自分にとってためになる話をたくさん聞くことができました。このような機会を与えてもらえて本当に良かったと思いました、この経験は今後生かせていけると思いました。
反射率測定
フィッティングの結果、@の試料は膜厚205.7nm 、密度1.535g/cm3であることがわかった。
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