SPring8 実習報告
1つの作業のスペシャリストとしての責任や誇り
数理物理科学専攻 41419131 鈴木健太
HiSORで事前に放射光の実験をして、実験も面白いと思っていたが、半年ほどたち、
いざSpring-8に行くとなったとき、少し参加することに迷いがでた。
理由として、HiSOR実習から時間が経ちそのときの思いが薄くなっていたことや、
自身の研究を進めたいという気持ちがあったからだ。
また、企業の人がどれくらい本気で相手をしてくれるのかも分からず、
あまり期待をしていなかったということもあるかもしれない。
しかし、実際にSpring-8に行くとそこには真剣な企業の方々がいた。
今回の実験では複合酸化物光触媒の構成元素の組成比、結晶構造などを変えて、
XAFSに効果がどうでるのかというものだった。学生は7人。それぞれに作成するサンプルを3つずつ。
皆、1つは同じ配合比で資料を作ったのだが、そのすべてのサンプルの下準備が異なっていた。
実際に資料を作っているときはそんなことは知らず、少し雑に作ってしまったのだが。
また、資料を作るにあたり、資料の質量を計算して求めるといった課題を用意してくれていた。
ひとおとり説明を聞いて、計算を始めたのだが、分からない点がいくつかでてきた。
分からないことを質問したら、受け入れの人もすぐに的確な答えが返ってこなかったのだが、
皆でアドバイスを出してくれ、また、後からしっかり教えてくれ、皆でやろうという気持ちを感じることが出来た。
今回の実習で、他の研究室の人との交流も貴重な体験だったと思う。
私は、理論の研究をしているので今回の実験で行うことがほぼ全て初めての経験であった。
だから、人に聴いたり、人がやっているのを見たりして実験をしたのだが、
実験の研究をしている人たちでも研究室によってそれぞれの専門があり、やり方、考え方があり面白かった。
こういった経験は研究室に配属されてからなかったことなので互いにどんなことをやっているのかを知るという点で
よかったと思う。
また、特に印象に残ったのは企業の方々の細部まで注意を払い、出来るだけ効率的にやろうとする姿勢だった。
資料作成のときについていてくれた方は、細かい人らしいのだが、計量から測定資料が出来上がるまで
ほとんどの作業でアドバイスをいただいき、その1つ1つが納得させられるものであった。
後で聞いた話なのだが、しっかりとした結果を出すため、もしくは、でなかったときにその理由を考えるときに
全てがいい加減では原因が分からないからだそうだ。その方は主に測定資料を作る人なのだが、実験を行う
1つの作業のスペシャリストとしての責任や誇りのようなものを感じた。
企業だけに限ったことではないのかもしれないが、合成や資料の作成、測定などそれぞれの作業に、
それぞれの専門家がいた。実際には自分以外の領域についても知っているので、専門家ではないのだろうが、
やはり自分の領域のことになるとすごいなと思わせられることが多かった。
そして、それぞれが連携して1つの実験を行っている。人間関係が大変だとは言っていたが、
これを一つの組織の中で行うのが企業なのだなと思った。
今回の実習は、HiSORのときとは異なり、より大きな施設を使い、より大きな組織で行われたことにより、
実験の一連の流れを感じることが出来た。また、実際に実験を行っているプロがどういったことを考え、
実験を行っているのかを知ることができ、研究を進めていく上での手順や心構えみたいなものを教えもらえた。
就職をするか、進学するかといった進路に関し考えさせられるものがあった。
最後に、あまり気が進まなかった実習を行った後の感想として、皆で実験することはやはり楽しく、
こうした大規模な施設で実験を行い、貴重な経験を得ることができよかった。
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