岡山大学大学院自然科学研究科 先端基礎科学専攻(物理学・数学・地球科学)  
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 1.[HiSOR 実習の感想]

実習報告

HiSOR 実習の報告


(12/4-5,6-7 HiSOR実習報告書)

概要:
  12/4-5,6-7の2回に分けて大学院自然科学研究科(工学部応用化学)高田研の院生がHiSOR実習を行った。実習内容は鉄酸化物薄膜の光電子分光測定であり、博士後期課程向けのものであった。実習前半には院生3名のほかに高田研の准教授の藤井先生、後半には院生3名に加えて4年生が参加した。前半では試料の表面処理を行い、その表面の低速電子線回折(LEED)観察、価電子帯スペクトルの測定、共鳴光電子分光測定および角度分解光電子分光測定を行った。後半では、特定の方向のバンド分散を詳細に調べる測定を行った。また、学生は物理を専門としないため、実習中に逆格子の基本的な概念を光電子分光の原理とあわせて説明した。  参加者は皆好奇心旺盛で、HiSOR施設、放射光や岡山大学ビームラインの特徴を熱心に学んでいた。また、馴染みの無い逆格子についても学生は数多く質問し、積極的に知識を吸収していた。実習内容についても、専門的で高度ではあったが、測定内容を質問したり実験の補助をしたりと、各自が自分なりの方法でその理解に努めていたようである。今回の実習では、参加者が実験装置に触れる時間を十分とれなかった点が心残りであるが、その分、実習内容の説明や議論に十分時間が割けたことは良い点であった。 以下、参加した院生の感想を記す。

  • 今回の放射光実習ではSPring-8やPFに以前いったこともあるため、大体どのようなところに行くのかは想像できていたので、そこまで驚きはなかった。ただ蓄積リング自体が小さく実験ハッチが無いのは新鮮だった。  実習の内容では主にLEEDとPESの実習であったが、今まであまりふれたことが無い分野なのでとても勉強になった。また普段みることのない装置に触れられたのはよかったと思う。装置自体に余り触れられず作業できなかったのは残念であった。いままで余り逆格子や光電子などの勉強をしていなかったが、今回の実習でその分野の重要性が見えてきた。そういった上でも今回の実習はとても有意義に過ごせたと思う。

  • 広島大学という隣の県に放射光施設があるということで、この施設で実際に装置に触れ、勉強することで放射光についての知識をより深めれるのではないかと思い、この実習を行いたいと思いました。SPring-8実習の後だったので、思っていたよりも小さな施設でした。しかし、ビームラインが小さな間隔でおかれていることに驚きました。また入射電子ビームが電子蓄積リングにほぼ直角に曲げて入射していることにも驚きました。今回の実験は光電子分光によってFeTiO3の電子状態の占有準位の情報を得ることができるというものでした。まずLEEDを行い表面状態を見ました。このLEED、光電子分光について理解するために、逆格子ベクトルやΓ点とは何かなどを教えてもらい勉強でき、光電子分光でどのようなことが分かるかを勉強できました。今回の実習では、実験に沿った基礎的なところを勉強でき、知識を深めることが出来ました。

  • 今回、大学院の放射光科学実習を受講した動機は自分の研究内容と関係が深いということが最大の理由だ。HiSORの施設に関しては、SPring-8のイメージがあったので、もっと大きなものを想像していたが、実際に実物を見ると思ったよりも小さいという感想を持った。また、実験内容については、FeTiO3薄膜の表面の電子状態を、軟X線を用いたLEEDやXPSを行うということは予め聞いていた。私は放射光に関する知識があまりないことを自覚していたが、実習のために自分でテキストや本を読んでもなかなか理解できなかった。そのため、実験では測定原理や何を測定しているのかがわからないまま測定をすることになるかもしれないという半分諦めの気持ちがあった。しかし、実際にHiSORに来てみるとポスドクの脇田さんも理学部の村岡先生もとても親切に基礎的なことから教えて下さって、非常に勉強になったとともに、自身の勉強不足、理解不足を申し訳なく思った。今回のことで、普段もっと頑張っておけばよかったと感じた。帰ったら測定データの解析ができるように、復習をしようと思う。

  • 私は、普段岡山大学での実験でX線を用いて主にXRDで試料を測定している。しかし、X線自体の性質や、また軟X線や他の硬X線などを使ったほかの測定法については詳しく知らない。そこで今回の放射光科学実習が実施されることを知り、自分の知識と理解を深めようと思い、今回の実習に参加した。  今回実習で取り扱ったのは、光電子分光である。名前を聞いたことはあったが、放射光施設自体が初めてで、原理をきちんと理解し、扱うことが出来るか不安に感じていた。しかし、実際の施設を目にしながら説明を聞き、操作すると、考えていたよりも早く理解できたと思う。また、光電子分光やLEEDなどでは逆格子の概念が非常に重要であることがわかった。逆格子については大学院の講義で聞いたことがあったが、実際にどういう場面で使われ、役に立つのかを知らなかった。今回の実習でその必要性を痛感し、今までは避けてきた領域だけに、これからも勉強を続けていかなければならないと思った。  今後も光電子分光やLEEDだけでなく、放射光を使った測定を行うことがあるかもしれない。今回、光電子分光についての理解は深まり、実に有意義な実習だった。しかし、放射光の装置をきちんと取り扱えるようになるには、まだまだ知識が足りない。今回学んだことを復習するとともに、さらに理解を深め、また周辺的な分野なども勉強していきたいと思った。

  • 私が今回この実習に参加した動機は、私の研究室の准教授に薦められたということもありますが、一番の理由は、私はSPring-8以外の放射光施設に行ったことが無く、他の施設がどのようなものかを見てみたいと思ったからです。また、普段あまり触れることの少ない放射光に携われ、尚且つ知るためのよい機会であると思い、実習に参加しました。  HiSORに来る前は、実験室の真ん中に大きいリングが一つあり、その周りで実験を行っていると考えていたのですが、実際に実験室の中に入ると、リングが思っていたよりも小さく、またリングが半分しかなかったことと、実験室の中のビームラインどうしが非常に近くにあったことに驚きました。  この度の実習で何を行うかを知ったのが実習の前日であっため、実習で行った光電子分光についてほとんど何の予備知識もなかったので少し不安でした。ですが、先生方の丁寧な御指導のおかげで測定原理から、測定から何がわかるかまでの大筋を理解することが出来ました。特に、今まであまり分からなかったため敬遠していた逆格子についての考え方が、今回説明を受けることでその概念を理解することが出来たと思います。それ以外にも、軟X線の性質や、その単色化の方法等、様々な事を学ぶことが出来ました。  今回、実習として行った事は先輩の試料の測定の手伝いであり、実際に試料を装置内に入れたり、データを解析したりすることはなかったのですが、どのような目的で測定を行っているのかや、測定の仕方については知ることが出来ました。また、実際にLEEDの回折パターンを見たのですが、想像していたよりもはっきりと見えたので驚きました。  今私が行っている研究では、光電子分光を使う機会はあまり無いとは感じましたが、今回の実習に参加したことにより、放射光についての基礎的な知識や、どのような場合に光電子分光が有効であるかを知ることが出来たため、非常に有益な実習であったと思います。今後この経験をいかし、後輩や同僚にアドバイスが出来るよう、今回学んだことを復習するとともに、放射光やその実験方法についての知識を深め、役立てていこうと思います。

  • このたびHi-SORにおける放射光科学実習に参加させていただいたのは、普段私が岡山大学の無機材料科学研究室において、イルメナイト−ヘマタイトをはじめとする鉄‐チタン複合酸化物を広く合成・その電子構造を明らかにし、ひいてはスピントロニクス分野においての活用を目指すという研究を行っているためである。まだ講義などで習った程度の、ほんのさわり程度の知識しか持たない私にとって、実際に電子構造を明らかにするための手法に触れ、使用できるようになるためには必須の実習であると考えた。  実際に実習を受けさせていただいて、今回のHi-SORで行えるような、軟X線をもちいたXPSでは、主に薄膜としての金属酸化物の特性が評価されるもので、普段私が作製しているバルク材の段階では、表面の電子構造についてのみ明らかにできるものであることが分かった。しかし、結晶構造・電子構造の評価の仕方、逆格子空間やLEEDなど、非常に有意義なことを多く学べた上、ひいては他の色々な測定のためにもなりそうな(特にX線についてや、シンクロトロンなどについての)見聞を広めることができたと思う。  今回は実際に自身でサンプルを評価する、ということはできなかったが、むしろ逆に色々な作業に混乱させられることもなく、わかりやすい説明と、実際にLEEDの像の変化などが見られたことなど、非常に勉強になった。測定方法は細かな影響に非常に敏感であり、また実際の測定には長い時間がかかるものだと感じたが、今後私が実際に測定・分析をする際にも、きっとできると感じた。  今回はどうもありがとうございました。また私が面白そうな薄膜を作れた際にはぜひよろしくお願いします。

12/4-5の実習参加者
右より、 藤井先生、古谷君、 脇田研究員、菅野君、
高田君、小川君
12/6-7 光電子分光測定の実習風景
12/6-7 の実習参加者
右より、團野君、中塚君、 脇田研究員、原田さん


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